家ができるまで
1 調査 〜 1 − 1 ヒアリング 1 – 2 調査 1 – 3 調査報告 ~
「家を造る」という事は、これから非常に長いお付き合いをさせて頂くという事です。
その前段階としてお互いを理解する為の「お見合い」期間として、弊社が手掛けた実作を見学して頂き、お客様が熟考された上でご依頼を承って居ります。始めのヒアリングでは主に、
・家族構成(ご年齢、性別等)
・ライフスタイル(趣味、仕事、新居での住まい方等)
・要望(室数、キッチンのスタイル、庭、植栽、駐車場等)
・収納(仏壇や手持ち家具・家電等)
・予算などをお伺いします。
次に調査をします。大きく分けると以下の2つの調査があります。
1.敷地:実際の土地に関する調査
周辺環境、地盤調査、道路状況、ライフライン等(電気・水道・排水・ガス)の整備状況
周辺環境を眺めながら「視線の抜け」「光」「風」などの、設計をする上で大切な欠かす事の出来ない情報を、目で見て、体で感じて確認します。
2.行政:法に関する調査
「家を造る」にあたって、建築基準法、都市計画法だけでなく、その土地、建物によりさまざまな法律や規制があります。
管轄の行政や法務局などを訪れ、「道路」や「土地の規制や概要」(用途地域・建ペイ率・容積率等)について調査します。
調査を終え、書面にした調査報告書を提出し、調査をして感じた土地のポテンシャルや建物のあり方を説明し、2度目のヒアリングを行います。
2 設計 ~ 2 – 1 プラン提示 2 – 2 見積り・契約 2 – 3 実施設計 ~
ヒアリングによる情報や新居に住まわれるご家族を想い馳せながら最良の「答え」を探します。
その「答え」は短時間で見つかる事もあれば、場合によっては長い時間お待ちいただく場合もあります。プレゼンテーションの資料としては、周辺環境との関係が分かる図面を始め、平面図、立断面図、設計概要、場合によっては模型などがあります。プラン確定後、細かな見積書を作成します。
尾谷工務店の見積書は、○○一式などと曖昧には書かず、工事範囲・仕様と数量・単価を記載した見積書を作成します。
新築工事の場合、枚数は規模や仕様によって若干違いますが、少なくてもA4用紙50枚以上になり、多いと80枚位になります。
プランの設計だけでなく、コストの設計も大切です。
後でやり直しの効かない構造の強度や耐久性と、内装・外装・設備とのバランスを考慮した見積書をご提案し、お客様とイメージを確認しながら細かな仕様を決定して行きます。
そして契約後、許認可のため、法に適合した図面を作成していきます。
計画地によって、許認可の種類、期間が異なりますので詳しくはお問い合わせ下さい。
許可が下りたら、施工に向けて動いて行きます。
お客様の方では、住み慣れた家から仮住まいにお引越し、敷地では解体・造成工事が始まります。設計者の方では、50枚~70枚の実施設計の図面(意匠・構造・設備)を書き上げます。
この図面は、現場がスムーズに進むためだけでなく、将来のメンテナンスにも役立ちます。
3 – 2 木工事
基礎工事を終えた現場には土台が敷かれ、足場が架けられます。
構造材が搬入されたら良い日取りを選び、いよいよ「建て方」の開始です。重い木材をクレーンで吊り上げ、大工と鳶職が効率よく順々と構造材を組上げて行きます。不安定な足元にもかかわらず、力強く木槌を振り上げる様は圧巻です。通し柱・管柱・梁といった家の骨格となる部材が組まれ、棟木が上がると「上棟(棟上げ)」です。
その後、さらに沢山の材料を使い木工事を進めて行きます。昔と違い、現代の建物は材と材を繋ぐ接合部分には地震や台風などの外力に抵抗できる構造金物を使うようになりましたが、天然素材でもある木の特性を知り、適材適所に配置して用いて行くのは今も昔も変わらない大工の技と言えます。
3 – 3 屋根工事
尾谷工務店の建築では、美しい屋根は重要なポイントになっています。
屋根工事では、風雨から建物を守るのは当然ですが、過剰な設備に頼ることなく室内環境を快適にする為にも空気の流れも考えます。垂木を配り、破風板を取り付け、屋根でもっとも痛みやすい先端の広小舞には水に強く耐久性のある桧材を使用します。そして、野地板、ルーフィング(防水紙)を張ります。下地が出来たら屋根材を軒先の先端から一枚一枚丁寧に葺き、隅部分を綺麗に納めていきます。
最後は、暖められた空気を外部に排出されるように、棟換気を取り付けたら屋根工事の完成です。
瓦やコロニアルなどいろいろな屋根材がありますが、弊社では耐食性に優れ軽量なガルバリウム鋼板を良く使用しています。末永く、家族を風雨から守ってくれ、地震に有利でランニングコストを抑えられる屋根になるでしょう。
3 – 4 防水・金属工事
ベランダの防水では、表面を平滑に下地調整をしたら防水層を密着させる為プライマーを塗布し、ガラス繊維強化を重ねながらポリエステル樹脂を浸透させて防水層を作ります。
乾燥養生後、防水層を紫外線から守る為にトップコートでコーティングし仕上げます。これをFRP防水と言います。
金属工事では、雨樋の取り付けをします。屋根から流れてくる雨水を受け止める雨樋は目立たない部材ですが、しっかりと機能する事で屋根や外壁を長持ちさせます。そのほか、外部木製建具枠を長持ちさせる為に、下端を銅板で巻いたりするのも熟練した技が必要な金属工事の一つです。
3 – 5 外装工事
建物の屋外側を仕上げる外装工事。
まずは、壁面に防湿シートを張り、胴縁を等間隔に打ち空気層を確保し、壁をつたう雨水が下端に回り込まないように水切りを設置します。
外壁の仕上げには、板・タイルなどがありますが、ここではジョリパット左官仕上げの工程を説明します。
下地は外装パネルで、塗材がサッシなどに付着しないよう養生をしてから、シーラー処理をし下塗りをします。そして天候の良い日を選び、ジョリパットに骨材(寒水石)を配合した塗材を攪拌し、数人がかりで一気にコテで塗っていきます。
気温・湿度・風・日のあたり方により表面乾燥の速さが変わるので、大小さまざまなコテを使い分け、同一面を連続して素早く均一に仕上げていく必要があります。
外装工事後、樋などの外部の部材を取り付け、足場が外れたら、真新しい外観が姿を現します。
3 – 6 内装工事
内装の仕上がりは、家づくりでお客様がもっとも楽しみにされている部分ではないでしょうか?
永く快適に住み続ける上で、内装のしつらえはとても重要な要素といえます。内装工事には建物の屋内を仕上げる工事全般を言いますが、ここでは大工の仕事を紹介します。1つ目に、床・壁・天井の下地を組み、仕上げ材を張ります。板は、板目・色味を見ながら割付をし納まりよく張っていきます。2つ目は、造作材の加工・取付をします。手摺やカウンターは人の手に触れるので、滑らかに整え手触りの質感を大切にします。また、建具枠は図面通りに加工するだけでなく美しく納めます。その為には、経験と技術だけでなく感性が必要となります。
尾谷工務店の建築では、経年変化を楽しめる無垢の材料を適所に使います。例えば、杉・桧・タモ・ローズウッド・チーク・桜・ナラ・ウォールナット・サワラなどさまざまです。無垢材は、育った土壌や気候の違いで色味や板目の表情が違い、それぞれの種類により柔らかさ・硬さも違えば、吸湿性・曲がりやすさ・加工性も違います。
造作材に使われる無垢材は、ノミとカンナを使い大工の手で加工され組み立てられます。無垢材で造られた空間は、工業製品では得られない豊かさと経年変化を楽しむ事を教えてくれます。
3 – 7 塗装工事
塗装工事とは家の内外を塗装することをいいます。
美しく仕上げるためには、隠れてしまう下地を丁寧につくる事が大切です。
ここでは屋内の塗装工事を説明します。まずは仕上がりを左右する大切なパテ処理です。石膏ボードのつなぎ目やコーナー部分には割れ防止のファイバーテープを張り、つなぎ目やボードを留めたビス孔にパテを塗りつけます。
下塗りパテを塗りつけ、乾燥後に紙やすりで平らに研磨し、中塗りパテ、上塗りパテと研磨を繰り返し、壁・天井を平滑な面にしていきます。狭いところ、広いところと場所に応じて数種類のヘラを使い分け下地を整えていきます。
下地を美しく整えたら、いよいよ仕上げの塗装です。
パテ処理と同じように、下塗り、中塗り、上塗りを繰り返しながら美しい塗装面をつくっていきます。
クロスを張る場合でも下地は同じように大切です。糊を薄く塗った壁紙は、乾く前に手際よく張っていきます。
いずれも、みてくれの表面だけでなく、隠れてしまう下地を丁寧に処理する事が大切です。
3 – 8 建具工事
外部や各部屋との空間を開閉して仕切るものを建具といい、この建具のディテールで住まいの雰囲気は大きく変わってきます。建具には大きく分け金属製建具・木製建具があり、金属製建具には、サッシ・ガラスなど。木製建具には、部屋や玄関の戸・襖・障子などがあります。尾谷工務店では予算が許す限り、一人一人の体型に合わせて仕立てた洋服のように、主な木製建具は空間に溶け込むようにしつらえたいと考えています。
現場では建具屋さんが、図面を見ながら細かな納まりを確認し、採寸をします。作業場に戻り、美しい板目で反りや暴れの少ない材料を吟味し、建具を製作していきます。製作を終えた建具を現場に搬入し、使い勝手を確認しながら、カンナで細かな調整をしたり、取手や金物を取り付けたらいよいよ建具が吊り込まれます。
建具が入ると空間は、豊かになり柔らかく包まれてるように感じます。
3 – 9 左官・タイル工事
仕上げの工程には、左官工事・タイル工事もあります。
左官工事では、漆喰・京壁・モルタルなどの塗材を鏝(コテ)を使い、壁や天井を撫で仕上げていきます。現代では、工業製品の建材が多くなりましたが、伝統技法である左官仕上げには職人の洗練された風合いがあります。
タイル工事では、割付の墨出しをし、タイルを張り、目地を詰めていきます。この他に石工事があります。土間の石張りは玄関引き戸の寸法に合わせ石を切り、レールを埋め込みながら勾配を取り、端部まで神経を払いながら美しく仕上げます。
いずれも、流行に左右されない質感と風合いの素材です。
3 – 11 各設備工事
各設備工事には、給排水工事・給湯設備工事・衛生設備工事・ガス設備工事・電気設備工事・空調設備工事などがあり、最初から最後まで現場に関わり、生活に必要なライフラインを担っている大切な工事です。
音・明るさ・温度・などは個人差があるので判断は難しいですが、快適な住環境の為に2階の排水管には遮音材を巻いたり、適所に照明を配置するなど出来る範囲で配慮をします。
めまぐるしく進化する設備だからこそ、過剰な設備に頼らず、過不足無く適所に必要な設備をしつらえる事が大切だと考えています。
3 – 12 外構・植栽工事
施工の最後は、外構・植栽工事です。
外構工事では、フェンス・塀・アプローチ・駐車場・ウッドデッキなどの外部に関わる工事をいいます。塀には、インターホン・ポスト・表札・照明等を機能的に、使い勝手良く配置します。
すまいにおいて自然の美しさや豊かさを感じることができる植栽工事は非常に大切です。
「家庭」という言葉から分かるように家と庭は密接な関係で生活にとって切りはなすことができない大切な要素です。家と庭が一体になるには3年5年10年かかるかもしれませんが、四季折々の植栽で日々の暮らしが豊かに快適になっていただければと願っています。
4 検査 ~ 4 − 1 各種検査 4 – 2 完了検査 4 – 3 引渡し ~
細かな検査は各工程ごとに行われます。
地縄検査、配筋検査、軸組検査、構造検査、配管圧力検査、電気配線検査、外壁下地検査、木工事検査、通電検査といったものがあります。施工を終えいよいよ引渡しの前には完了検査を行います。
完了検査には、尾谷工務店が行う社内検査、そして施主ご自身による施主検査があり、続いて建築確認申請通りに建築されているか検査機関による役所検査があります。合格すると検査済書が発行されます。
通常、完了検査から引渡しまでは1、2週間です。
引渡し当日、工事用キーからオーナーキーに切り替え鍵を施主様にお渡しすると、待ちに待った新しい家での生活が始まる瞬間です。
住宅は建てて終わりではありません。今後とも、末永いお付き合いをお願いいたします。